Sasha Series-2: The Legacy Continues
かつて80年代の初頭、記念すべき超弩級スピーカー”WAMM”に始まり、幾世代もの間ハイエンドオーディオ界を席巻してきた”WATT/Puppy”を経て、ウィルソン・オーディオは、テクノロジーとマテリアルにおける時代の進化を、先駆けて、それぞれのプロジェクトに傾注してきた長い歴史を持っています。いろいろな意味で、新しいウイルソン製品は、累積的な科学技術の成果を的確に取り込むために最適化した最新の入れ物とも言えるでしょう。Sasha Series-2の原点、オリジナルSasha W/Pは、その志向性においては、大きさこそ異なれど、”WATT/Puppy”のスタイルから脱却しAlexandriaやMAXXの系譜を辿るために生まれました。そして、その誕生から4年の今日、Sashaは最新のフラッグシップ機”Alexandria XLF”の開発によってその大いなる可能性が見出された”コンバージェント・シナジー・トゥイーター(CST)”という新たな素材を得てその進化がさらに加速します。”CST”は、中域から超高域に及ぶその超広帯域特性によって、当然の如く、中低域の全てに影響を与え、これまでのSashaの構造に少なからず変化を求めます。その結果生み出された新しいエンクロージャーと構成が、より正確なタイムアライメント性能と高調波表現力、ダイナミック特性など、音楽性に深く関わる全ての能力の進化を促しSasha Series-2となってここに新たな伝説の一ページを加えます。
Custom Version of the “Convergent Synergy Tweeter”
[ “コンバージェント・シナジー・トゥイーター”のカスタムバージョンを搭載 ]
トゥイーターには、ウィルソンの大型システム”Alexandria XLF”の開発でその新技術が確立されたシルクドーム型”コンバージェント・シナジー・トゥイーター”(“CST”)のSasha Series-2専用カスタマイズ・バージョン・ユニットを搭載。ミッドレンジ・ドライバーとのスムーズな繋がりを確保するために不可欠なクロスオーバー・ポイント1.2 kHz付近までの下限周波数特性の伸びと、30kHz以上にも及ぶ超高域をカバーする優れたドライバーです。
トゥイーターの技術は、ダイヤモンドやベリリウム、セラミックなど、エキゾチックな素材を使った新しいデザインとともに、21世紀最初の十年でさまざまな展開を見せてきしました。これらのデザインの支持者は、50 kHzを超えるその超広帯域特性を絶賛します。エンジニアリング的なその理論的根拠は、可聴帯域外の伸びが可聴範囲内のリニアリティーを大きく改善するだろうというものでした。
デイブ・ウィルソンと彼のエンジニアリングチームは、そうした新しいデザインのトゥイーターについて、Alexandria XLF 開発の3年間に亘ってテストと評価のプロセスを開始しました。
一方で、ウィルソンは既にその時、スタンダードなミッドレンジとの整合性を向上させるために主に背面波の反動制御によって高域ノイズ・フロアを下げ同時に高いゲインを獲得したチタントゥイーターのリニューアルを終えていました。
同時に始まった全く新しいデザインの研究では、ドライバーの質量を下げることによって、50kHz以上の再生が可能なトゥィーターは簡単にできることも確認されました。しかし、それは、ウィルソンが要求するパフォーマンスに対して少なくとも二つの制限を課したのです。その一つはダイナミックコントラストであり、二つ目は、ミッドレンジ・ドライバーとのスムーズな繋がりを確保するためには不可欠なクロスオーバー・ポイント1.2 kHz付近までの下限周波数特性の伸びが不足すると言うことでした。そして、最も興味深いのは、新しいエキゾチックな素材によるトゥイーター・デザインはどれもダイナミック・コントラストとハーモニクス表現力においてウィルソンの既存のチタン・デザインに及ばないことでした。
既存のユニットへのデイブのフラストレーションは彼自身の新たなトゥイーターを設計する決断を促しました。その努力の結果がコンバージェント・シナジー・トゥイーターです。これまでのウィルソンのトゥイーターがもつ高いダイナミック・コントラスト、ハーモニクス表現力、卓越したパワーハンドリング、低歪みなどのすべての長所を維持しながら、かつ、シルクドーム・ダイヤフラムによるこのトゥイーターはすば抜けた周波数応答の平坦さと極めてワイドな放射特性を持っています。振動系の低ムービング・マス化によって、それは37 kHzに及ぶ周波数拡張をも獲得しています。
その名が示すように、これらの資質は、音と技術の欠損がなく超広帯域設計のアドバンテージに収束 (コンバージ)。それはウィルソンのミッドレンジ・ドライバーにとって、相互に協調(シナジー)し合う最高のパートナーとなったのです。
“CST”は、リンギングやカラーリングを排し高い解像度とハーモニー・テクスチャーを醸し出す理想的再生によって音楽的説得力を全身で表すために、Sasha Series-2にとっての最重要ファクターの一端を担っています。
Midrange
[ 表情豊かなミッドレンジ・ユニット ]
Sasha Series-2には、Alexandria 2で新境地を得、今日すべてのフロア型ウィルソン・スピーカーにもそのバリエーションが展開されている7インチ ・ミッドレンジ・ドライバーをチューンアップして搭載。動的質量が極めて軽く強靭なファイバー混合コーンと強力な磁気回路によって俊敏で低歪率、驚異的な高S/Nを達成しています。
デイブ・ウィルソンは音楽を楽しみながらも、物理的解析と同時に、そこに潜む数値には表せないほどの微細な音の機微の解明のために、自らの耳を設計ツールとして積極的に活用します。そして、その耳は、しばしばリ・キャリブレーションのために、世界有数のホールに幾度となく足を運び、音色とハーモニーの多様さ、ライブ音の複雑さを感受し活性化させます。特に、ウィーン・ムジークフェラインの響きは、彼に多大なインスピレーションをもたらし設計推進の原動力となりました。その、ステージからのダイレクト音と一次反射、副次反射音との絶妙なコンビネーションが生み出す素晴らしい音のリアリズムは、ミリ秒オーダーの微細な音の重なりと広がりを精緻に再現するために関わってくるスピーカードライバーの俊敏性と歪みなどの要素の徹底的な解析につながったのです。
そして、ウィルソン・オーディオと専業ドライバー・メーカーとの提携による極めて高性能な、新たなドライバーユニットが開発されたのです。その技術は特にミッドレンジに全面的に注入され、動的質量が極めて軽く強靭なファイバー混合コーンと強力な磁気回路によって俊敏で低歪率、高S/Nを達成するドライバーを完成させました。
聴覚と技術の相乗作用がよりリアリスティックな音楽的体験の牽引に貢献する、・・・
ウィルソンの製品造りの根幹には、まさしくそうした技術が息づいています。
Midrange/Tweeter Enclosure
[ 新開発ミッドレンジ/トゥイーター・エンクロージャー ]
Sasha Series-2が新たに採用する”コンバージェント・シナジー・トゥイーター(CST)”は、これまでのSashaとは異なるエンクロージャー構成を要求します。ミッドレンジのバッフル面には、これまでと同様に天然ファイバーとフェノール樹脂の混成積層構造によるS材を採用。適度な内部損失と強度を両立させ、中音域の極めて自然な響きをサポートしています。
しかし、トゥイーターのバッフル面はそれと異なり、より強固にしてごく僅かな振動による波面の乱れをも生じさせないために、第三世代のX材を採用。専用のバックチェンバーをも独立させ、背面波の徹底除去と干渉を防止しています。
そのトゥイーターモジュールとミッドレンジユニットとを一体とした複合エンクロージャーには、やはり同様のX材を採用し、内部には巧妙なブレーシングを配備。複合エンクロージャー全体としての低共振化と高剛性化による高S/Nを図っています。
Radically Enhanced Time Domain Performance
[ タイムドメイン・パフォーマンスを極める新機構 ]
ベース・エンクロージャーに対してミッドレンジ/トゥイーター・エンクロージャーを独立マウントとし、その対向角度を微調整することによって極めて精確なタイムアライメント調整を可能とする独自の伝統的な機構をブラッシュアップして搭載しました。
Sasha Series-2で新たに搭載されたシルクドーム型”コンバージェント・シナジー・トゥイーター”の軸応答性は、これまでのチタン・トゥイーターの場合とは異なるジオメトリを求めます。
Sasha Series-2のミッドレンジ/トゥイーター・エンクロージャーのトゥイーター・バッフル面とミッドレンジ・バッフル面は同一平面ではなく、計算された最適角を与えられています。そしてさらにそのミッドレンジ/トゥイーター・エンクロージャーは、大型システムと同様の異なる長さのスパイクと10ステップのブロック位置との組み合わせてバッフル面のあおり角を調整するという精巧な機構を採用しています。ミッドレンジ/トゥイーター・エンクロージャーのスパイクはブロックステップに強固に揺るぎなくホールドされて、低域対中高域のタイムドメイン・パフォーマンスは理想的に最適化されます。
2×8” Woofers/Enclosure
[ 8インチ・ダブル・ウーファー/エンクロージャー ]
Sasha Series-2には、オリジナルSashaで開発された二基の8インチウーファーを搭載。WATT/PUPPYの時代を大幅に上回る強力なマグネットとモーターアッセンブリーの強化による磁気回路はウーファーコーンのモーションスピードを飛躍的に向上させ、低域のダイナミックスを大きく改善しています。
ベース・エンクロージャーには、ウィルソンが進化を極めてきた第三世代の分厚いX材を精密切削加工して強固に組み上げています。
セルロースとフェノールの混成によって鋼鉄のような強靭な硬度とずば抜けたダンピング性能を併せ持つX材によるエンクロージャーは、オリジナルSashaよりわずかに奥行きを増し、ハイスピードできめ細かな諧調表現を伴ったダイナミック感溢れる豊かな低域再現力をサポートします。
The WilsonGloss Finish
[ 入念な塗装 – ウィルソングロス・フィニッシュ ]
Wilson Audioスピーカーのエンクロージュアは、すべて、「ウィルソン・グロスペイント」という世界有数の高級車の塗装以上に複雑な工程による高品質な塗装が施されています。 「ウィルソン・グロスペイント」は、OSHA(アメリカ労働安全衛生庁)の厳格な規格に基づくクリーンルームのペイントブースで温度、湿度、気圧が徹底管理され入念に行なわれます。
塗料技術者は、最初に、白い粘着性のゲル・コート(ボートなどで海水の進入を防ぐために使われるものと同等の素材)をあらゆる露出している表面に吹き付けます。 それは、これがキャビネット外皮のもう一層のダンピング材として機能するばかりか、ウィルソン・グロスペイントを滑らかに仕上げる下地となります。
ゲル・コートは3日間かけて落ち着かせます。そのあと、エンクロージュアはペイントブースに移され下塗りが三回繰り返されます。乾燥後さらに八層の「ウィルソン・グロスペイント」が施されます。七日間かけたこの塗装工程では、ルーペによる厳密なチェックと微細な補修も並行して行なわれます。塗装工程の最後は丁寧なバフ仕上げ。艶やかな光沢をもつ「ウィルソン・グロスペイント」の完成です。
Sasha Series-2のグロスペイントのカラーバリエーションは、すべてのウィルソン・スピーカーと同様に、Galaxy Gray, Obsidian Black, Argento Silver, Desert Silver, Titanium Brownという5種類のスタンダードカラーと、11種類のアップグレードカラー、さらに、色指定によるカスタムカラーなど、実に多彩です。また、グリル色も6種類の中から指定ができ、本体カラーとの自在な組み合わせを可能としています。
[ Specifications ]
●ウーファー: 2 x 8インチ (20.32 cm) ポリプロピレンコーン
●ウーファーエンクロージャー : リアポート, Xマテリアル
●ミッドレンジ: 7インチ (17.78 cm) セルロース/ペーパー・コンポジットコーン
●トゥイーター: 1インチ (2.54 cm) シルクドーム
●ミッドレンジ/トゥイーター・エンクロージャ:リアポート, Xマテリアル&Sマテリアル・ミッドレンジバッフル
●感度: 92 dB @ 1W/1m @ 1 kHz
●公称インピーダンス: 4Ω (最低: 2.17Ω@ 90 Hz)
●周波数特性: +/- 3 dB 20 Hz - 27 kHz Room Average Response
●推奨アンプ最小出力: 20 W/channel
●外形寸法: 35.56W × 114.61H × 56.24D (cm)
●重量: 93.89kg(1台)