MSBテクノロジー　The Cascade DAC (カスケードDAC)

イノベーションとエクスペリエンス、この2つの基軸がD/Aコンバーターに新しい時代を切り開きます。Cascade DACの開発にあたってMSBは、これまでの常識的な DAC アーキテクチャーの基礎を根本から見直しました。そして、その変換プロセスと機能を 3 つの独立したシャーシーに分割しシステムアップしました。
まず、必要でありながら電気的にノイズの多いすべてのデジタル入力とその信号処理、そしてインターフェースをCascade Digital Director」 に集中させ、次に、すべての重要な低ノイズ アナログ エレクトロニクスを 「Cascade Analog Converter」 に収容。そして最後に、すべてのアナログ電源を「Cascade Powerbase」 に格納しています。
この理想的なコンポーネント分割により、ほぼすべてのシステムとリスニング環境で卓越したアナログ再生を可能とします。

■Part 1: Digital Director / デジタルディレクター

「デジタル ディレクター」は、すべてのデジタルオーディオプロセスを処理する「Cascade システム」の頭脳です。トランスポート、レンダラー、サーバー、コンピューターなど、デジタルドメインとアナログドメインの仲介役として機能します。

忠実なアナログ再現のための新しい高度なアルゴリズムによって、ほぼすべてのデジタルフォーマットを識別し、構成、処理することができます。低ノイズのリニア電源、洗練されたユーザーコントロールシステム、視認性の高い LED ディスプレイ、そして、ユーザーがインストール可能なプラグイン式のデジタル入力モジュールを備えています。
「デジタル ディレクター」によって処理されたデジタルオーディオ信号は、超高精度、超高速、超低ジッターの赤外線レーザー光による「Cascade-Link」 を介してCascade DAC本体に出力します。
これによって、デジタルドメインとアナログドメインとにデジタル干渉のない完全なアイソレーションが図られ、かつ、DAC本体から離してシステム内のどこにでもデジタル ディレクターを容易に配置することを可能としています。

●録音信号の完全復元

「デジタル ディレクター」には 2基の高性能 DSP が搭載されています。
各 DSP は 2つの専用 FPGA と連携して 1 秒あたり 120 億回の演算処理が可能です。これは、前世代の DAC の 4 倍以上のパワーです。それだけではありません。数十年にわたる研究開発から生まれ、Cascade DAC ハードウェア専用にカスタマイズされた高度な新しいデジタルフィルターによって、Cascade DAC は元のアナログ信号に極めて忠実な再現性を提供します。DSP処理におけるヘッドルームが拡大されたことで、デジタルフォーマットに関係なく、大音響のホーン、ボーカル、オンマイクで録音されたピアノ、大規模なアンサンブル、フルオーケストラなどの複雑なパフォーマンスから、繊細なニュアンスを醸し出す美しい響きまで、余すところなく広大なサウンドステージに解き放つことを可能としました。その、極めて自然でエモーショナルな再現能力はまさに超絶のパフォーマンスと言えるでしょう。

●Cascade-Link / カスケードリンク

MSBは、あらゆる音楽再生環境で高精度のアナログ パフォーマンスを実現するために、ProISL,ProUSBなど、これまで、デジタルオーディオ信号の伝送に、赤色レーザー光を使った双方交通信による独自のシステムを採用してきました。

「カスケードリンク」はそうした特異なMSBの技術のひとつで、Cacade DACのために特別に設計されています。デジタルディレクターで扱うデジタル信号の電気的ノイズを遮断し、アナログコンバーターに搭載された「 Hybrid DAC MKII」 が要求するノイズのない高帯域幅のデータストリームを、生の非圧縮データとして淀みなく伝送します。これによって、Cascade DAC は、サーバー、WiFi ネットワーク、LED 照明など、あらゆるデジタルノイズ環境からも影響を受けることなく、比類のないレベルのアナログ純度を生成することができます。今後のデジタルシステムとアナログシステムの設計思想に一石を投じる技術、それが「カスケードリンク」です。

●ワイドディスプレー

視認性が高く、視野角が広いディスプレーは、それだけでなく、徹底的にノイズ対策を施しています。オーディオクロックに連動して発光する LED ディスプレーは、フェムトクロックを時間基準として更新されるため、ディスプレーによって発生する有害なデジタルノイズによってアナログ システムが汚染されることはありません。さらに、LEDディスプレーは、最適な EMI 分離対策のためにCNCマシンで切削された専用のコンパートメントらに収められシールドされています。

■Part 2: The Analog Converter / アナログコンバーター

デジタル ディレクターが Cascade システムの頭脳だとすると、アナログコンバーターは心臓部です。8 つの新しいハイブリッド DAC MKII モジュール、Femto 33 MKIII クロック、パッシブアナログステージ、出力インピーダンス75 オームのボリューム コントロールを備えています。

デジタル音楽信号はノイズのない Cascade-Link を介してハイブリッド DAC に直接流れ、アナログ信号は、デジタルを介さずに直接コンバーターのアナログ入力によって受信されます。そして、MSB 独自の完全バランスの定インピーダンス・アナログステージに送られ、驚くべきパフォーマンスのアナログフォーマットに慎重に変換されます。その高いドライブ力は、パワーアンプへのダイレクトカップリングも可能としています。

●ハイブリッドDAC MkIIセクション

新世代のハイブリッドDAC MkIIが搭載されています。すべての音楽ファイルとすべてのデータ形式から最大の解像度を引き出すために、完全にバランスのとれた超高精度のディスクリート・ラダー DAC アーキテクチャーによって、元のパフォーマンスの音楽性、サウンド ステージ、テクスチャーを余すところなく再現します。前世代の 4 倍のデータ帯域幅を備えた Cascade DAC は、ノイズを低減し、解像度とリニアリティーを向上させ、アナログ音楽の詳細を最高レベルで忠実に再現。目の前にアーティストがいるかのような感性を呼び覚まします。

●Femto Clock MKIII / フェムトクロックMkIII

Femto 33 の新しい バージョンMark III は、Cascade DAC で最高のパフォーマンスを発揮するように最適化されています。厳密に調整された2 つの超低位相ノイズのオーブン水晶発振器の搭載によって、44.1kHz と 48kHz 両方のサンプリング周波数でジッターがこれまでで最も低くなっています。MSBの独自のオンボード・クロックモジュール・アーキテクチャーは、将来的なアップグレードをも可能とします。シンプルで合理的なシステム構成です。

●比類のないアナログ性能

アナログ信号は生成された瞬間から、不可逆的な劣化を受けやすくなります。これに対処するため、当社では、生成する繊細なアナログ信号への影響を最小限に抑えるようにアナログステージを設計しました。ハイブリッド DAC モジュールからのバランス信号は、完全にパッシブな 75 オームの定インピーダンス アナログ ステージに直接渡されます。信号はパッシブに減衰され、その後、いかなる種類のアンプにも触れることなく、すぐに XLR 端子から出力されます。これにより、信号の純度が最大限に保たれると同時に、あらゆるケーブル、アンプ、プリアンプを最適に駆動できます。各ボリュームステップの切り替は貴金属接点のラッチリレーによって行われ、信号のリニアリティーは最大限に保たれます。

●アナログの汎用性を最大限に高める

アナログ入力には、2 系統のバランス XLR 入力と 2系統のシングルエンド RCA 入力があります。
使用されていないアナログ入力は完全に切断され、回路の他の部分から分離されます。入力が選択されていないときは、ケーブルのグランドもフローティングされ、クロストークをシャットアウトします。各アナログ入力は、オプションで 0dB または +6dB のゲインを備えた超低ノイズ、低歪みのバッファーで慎重にバッファリングされます。その後、ハイブリッド DAC で使用されるのと同じ 75 オームの定インピーダンス出力段に切り替えられます。アナログ コンバーター部には、CPUなどのノイズ源となるデジタル処理回路がまったく無いため、専用のプリアンプのように、繊細な信号に干渉が加わることはありません。その結果、デジタル、そしてアナログのあらゆるソースから究極のアナログ信号純度が得られます。

Part 3: The Powerbase / パワーベース

アナログ パフォーマンスは、それをサポートする電源の質によって決定づけられます。そのため、Cascade システムではパワーベース・テクノロジーを全面的に見直しました。Cascade には、12V トリガーなどの電源制御ファンクションが組み込まれており、システムをスマートに統一することできます。

●The Summit Cable / サミットケーブル

スイスのフィッシャー・コネクター社と直接協力し、究極のパワーコネクションを果たすSummit ケーブルを開発しました。これにより、パワーベースとアナログ コンバーター間の最高品質の接続が実現。アナログパフォーマンスを新たな高みに引き上げています。

●クリーン・パワー

「Cascade Powerbase」 は、重要なアナログ回路の電源に関する当社の豊富な経験を基に構築されています。
AC 電源は、ローカル コンピューター、照明、および家電製品からの干渉によって汚染されることがよくあります。「Cascade Powerbase」のAC入力には、この干渉を大幅に削減する内部 AC フィルタリング回路を搭載。電源トランスは、電気的および磁気的にシールドされた 3 つの高 VA カスタム巻線タイプ。個別のシリコン カーバイド整流器によって DC に変換された生の電力は、新しい最適化されたインダクターとコンデンサーのバンクによってフィルタリングされ、生の DC から残留ノイズの大部分が除去されます。次に、MSB伝統の超低ノイズ リニア電源によって安定化が図られ、5系統の独立した電源レールに送られます。

●革新的なモジュール設計

ハイエンドオーディオ業界の最前線ではそのフォーマットが絶えず進化しています。MSBでは、常に最新のデジタルオーディオに対応できるよう、モジュール方式によって入力を差し替え可能とした独自のインターフェイス・アーキテクチャーを採用しています。これにより、ソフトウェア アップデートのみならず、将来のアップデートと製品サポートの柔軟性が向上。イノベーションへの強力な後押となっています。

●洗練されたユニボディデザイン

筐体は、「Kaiser Select Precision Plate(カイザーセレクト・プレシジョン・プレート) 」と呼ばれる、カイザー社の70ポンドの高品質アルミニウムの塊を、社内の CNC 工場で切削機械加工した継ぎ目のないワンボディー。5 時間の機械加工の後、アルミニウムの 75% が除去され、17 ポンドの最終形となり、最後にシルバーまたはブラックの最高の陽極酸化仕上げが施されて完成品となります。こうして、妥協を許さないCascade DACの美しい筐体デザインが誕生します。